琵琶法師の毛づくろい


by miminashibiwa

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「直面(ひためん)」その23。


(どうも電波事情が悪く、パソコンが使えない。)

今年もオーセントホテルに泊まっていたのだが、エレベーターに乗り込むとき、
あるいは相手が乗り込んで来るとき、ほぼ一様にギョッとされる。身体が凍り付く。
これから乗って来る人は特に、のけぞったあと乗らないのも失礼と考え平静を装い乗って
来る。そしてエレベーターの鏡越しにちらちら窺っているいるのがうっとおしい。
当方の格好はと言えば、浴衣に下駄、伸ばし放題白髪まじりのヒゲと髪。
舞台監督のマコちゃんまで、夜の食事の後遅く店を出て行くと「伊藤さん、怖ーいっ!」
毎日見てるだろうに、なんて奴だ。どうも、昔の右翼の大物か何ぞに見えるらしい。

8月7日(金)
前日の公演中に、ふっと気が遠くなる瞬間があり、今日は昼から点滴。
1時半までに桜坂で食事をすませ楽屋入り。
実行委員の高橋医院院長、高橋達さんがご祝儀に点滴の差し入れ。
21年振りの点滴。医者を目指す高校生のノンちゃんも、興味津々で見ている。
身体があったかくなる。ものすごく元気になる人がいると聞いたがそんな事はなかった。
点滴中はよく眠れるとも聞いたが、そんなこともなかった。
よく主演級の俳優が、本番前に点滴してきたと聞く事はあったが、俺も主演俳優になったかと馬鹿な事を考えていた。ひとり芝居じゃ主役しかいないのに。

何か忘れ物をして一度ホテルに戻り、出がけにマコちゃんがタクシーに乗り込んできた。
雨が降ってきた。
本番は、雨のために暗くなり、ライトの目つぶしで客席は見えない。
こうなると芝居がしやすい、集中しやすい。
一幕の終わり近くに突然雨が強くなり、習性で声が大きくなる。戦いを挑むのだ。
舞台を分ける舞台と客席のある建物の間、白州に滝のような雨。

休憩中の楽屋で十島さんに、マイクの音をあげているから声を張らなくてもいいと言われるが、そうはいかないのが普段マイクなしで「耳なし芳一」を語る者の性(さが)。

二幕はいよいよ面白くなる。雨に加えて雷が光りだす。
動揺して台詞を忘れないよう気を引き締める。雷が近づいて来る予感があった。
雷の光で客席が紫にひかり、お客さんの顔がよくみえる。不安の顔、かお、顔。

だんだん、ギリシャ悲劇かシェークスピアの悲劇をやっているような気になってきた。
こんな効果は、どこの劇場、誰の演出でも叶いはしない。
雷の音は聞こえなかった。雨は風を呼ばなかったのが救いだった。
風が吹いていれば、札響の演奏者たちもどうしたのだろう?
楽譜が飛ばされ、楽器は雨に濡れ、ピンマイクは風の音を拾い、客席に雨が吹き込み、、

私はどうなってもやるつもりだったが、この雷雨は芝居に味方した。
芝居の主役?資次郎が泣いてるか、観に来たのかと思わせる気象だった。
点滴が効いたのか、調子は良かった。

この日も高温多湿で、終わるとへろへろ。
ま、へろへろにならない芝居などほとんど出た事はないが。
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by miminashibiwa | 2010-08-29 01:06 | おたる遊幻夜会

「直面(ひためん)」その22。


そうだ、5日のゲネプロと6日の初日には、横浜からマコちゃんのお母上も駆けつけてく
れたのだった。両日ともお着物で。せっかくの北海道も猛暑だったのは残念でした。
お母上は、英語劇や語り琵琶耳なし芳一、一人芝居ガリヴァーまで観に来てくれている。
それを考えると「直面」は、マトモな部類のものかも知れない。
マコちゃんのお母上を見ながら、我ながら変な物ばかりやっているな〜と思った次第。

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初日の8月6日(金)
睡眠誘導剤を飲み、昼近くまで眠る。ホテルの朝食は9時半までなので食べられない。
浴衣を着て下駄を履き、小樽市能楽堂まで歩く。
「フジリンです」と声をかけられたのは、この日だったか昨日だったか、、、?
小樽市能楽堂で演じた、一昨年の「耳なし芳一」昨年の「遠き橋懸り」と観てくれ、
ブログに書いてくれている。
小樽のおでん屋さんらしいが、今夏も伺えませんでした。いつか、、、。

1時過ぎ、桜坂でブランチ?
丼物とそばを食べ、おにぎりを3個持ち帰る。
2時、作務衣に着替え舞台でストレッチをし、「経正」の舞や台詞をさらう。
横では音響の布谷さんが、演奏者の椅子や譜面台をセッティングしている。
一幕と二幕の間を楽屋で休み、また舞台で続きをさらう。今日も暑い。

[衣装と下着]
トランクス、能用の股引(女性の役も演ずるので、素足を見せない為)、白足袋、
膝用サポーター、袴、肌襦袢、半襦袢、紋付(東レ シルック)、羽織(東レ シルック)。

化繊の衣装は暑い。股引まではいているし、仕方がないのは重々承知だが、、暑い。

台詞の稽古がが終わった頃、指揮者や演奏者が少しずつ現われる。
十島さんが来たので、昨日まで謡っていた「高砂」を最初の一節だけ謡う事に、
「鶴亀」を途中から音楽が重なるように変えてもらい、神田さんにも了解してもらう。
謡の声の調子が戻らず、この声で全部謡っても演出効果として成果がないと判断。
年寄りの声を2時間近く出す事と、最後の謡の稽古で声を疲労させたせいか?

4時までにおにぎり2個食べる。いつも1個あまらせてしまう。

[老けメイク]
後ろ髪に水白粉を塗り白髪に見せる。ヒゲは結構白く、その色に合わせる。
マコちゃんに、プロピアの付け眉毛左右を私の眉毛の上に付けて、すいてもらう。
ヒゲにハードディップを塗り、かためる。顔や手に、汚しのメイク。
汗ですぐ取れてしまうのが困る。粉で押さえるのだが、間に合わない。

5時半頃から衣装を着始める(もっと早いか?)。暑いのでなるべく着たくない。
演奏者や指揮者が衣装を、実行委員の方達が浴衣を着せてもらっている。

[持ち道具]
ステッキ、軍扇、手ぬぐい。

この日も晴れて明るく、一幕が終わる頃まで客席がよく見えた。皆さん団扇でぱたぱた。

[休憩時間の過ごし方]
能舞台は楽屋の下にあるので、一幕が終わると階段を上がり楽屋になっている座敷へ。
トイレに行きたい時は大急ぎで駆け上がり、お客さんが来る前にすませてしまう。
楽屋に上がると、ノンちゃんかカミちゃんが用意してくれた冷凍タオルを、
頭の上と首に乗せて冷やす。ぬるい水かお茶のペットボトルを2本くらい飲む。
お菓子や果物をつまむ事もある。十島さんやマコちゃんと言葉を交わす。
取れた手のメイクを塗り直し、粉をはたく。瞬く間に、二幕の開演。

二幕に入り、日も落ちて役に入りやすくなる。いい感じだ。
終演後お客様の送り出しをする事になったので、早く出口に行くよう促されるが、
水を飲み冷凍タオルを頭と首に乗せ、なかなか動こうとしない私。
放っといてくれないかなと思う間もなく、吉岡君に腰を押されて入り口へ。

外の門のあたりまで出演者と作家が並びお見送り。
下駄を履いているので、お辞儀をするとつんのめりそうになり、門にしがみつく。
年配の男性に「目の正月になりました」と言われたのが嬉しかった。
この日は親戚や友人知人の多い日で、HBCラジオの桜井さんや室谷さんも。

サイン用にとマジックを持たされたが、3日間ほとんど頼まれることはなかった。
全公演を通して、眉毛の長い年齢不詳の男に声がかけづらいのか、
あまりお客様が寄って来なかった気がする。芝居がつまらなかったとは言わせない。

楽屋に戻って、頭に水道の水をかけ(色は落ちません)、体を拭き、着替えて食事。
東京から観に来た、劇団前進座の制作や元座員の方たちなどがいて同席。
十島さんが座友となっている劇団で、旅行ついでに観に来たとか。

酒を飲む元気もなく、疲れたのでひと足先に帰る。
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by miminashibiwa | 2010-08-19 19:42 | おたる遊幻夜会

「直面(ひためん)」その21。


さて、千秋楽から9日が過ぎてしまい、何があったのやら正確に思い出す事は出来そうにない。昨秋から日記などを一切付けなくなってしまったので、記憶のみのブログです。
かなりあやしいモノだとお知りおきください。

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8月3日(火)小樽入り。
朝8時羽田集合のはずが、演出の十島さんが来ない。マコちゃんと神田さんと私はチェック
インする。刻々と入る十島さんからのメールに返答する。もう駄目、これ以上待てない!
十島さんの為に飛行機を止めておきたいが、重すぎて断念。お先〜っ!

夕方6時から、十島さんとマコちゃんの三人で小樽市能楽堂に向かい場当たりをする。
台詞をさらい、どこに立つかなど自分で確かめる自主稽古のはずが,実行委員の方々が次々現われ、十島さんも演出家としてのダメ出しをしはじめ予定が狂う。

8月4日(水)リハーサル。
1時から市民会館第一会議室で音楽稽古。札響が練習する横で台詞を合わせる。
6時から小樽市能楽堂にて稽古。通しをしたのかどうか覚えていない。したらしい。

8月5日(木)ゲネプロ。
2時から能舞台で台詞をさらう。
夕方7時から、本番と同じ舞台稽古。今年もHBC TVが入る。ありがとうございます。
翌日、夕方6時のニュースで流れたそうです。
東京の夏から逃れてきたはずが、高温多湿の天気まで連れてきたようです。暑い!
お前が猛暑を連れてきたと、数人に言われる。俺のせいだったか!

去年より1週間早い公演は日の暮れも遅く、一幕が終わる頃までお客さんの顔が見える。
これは役者にはなかなか辛い時間で、集中がしにくく芝居に入っていきづらい。
台詞を間違えないための努力が大半を占める。言い訳に聞こえそうですね〜。

この日の二幕に、地謡座(札響が演奏していた場所)の向こうの道路から、
男の怒鳴り声が聞こえた。私の芝居に対して喧嘩を売っているように聞こえた。
台詞を喋っているのでちゃんと聞く訳にはいかないが、どうなるのかと思っていたら台詞を忘れた。敵が大声を出している時はこらえられたが、そのあとがいけない。
しばらく思い出そうとしたが、あきらめて後見のマコちゃんのところまで聞きにいく。
着替えや、こんな事のために後ろに座っていてくれるのだが、聞きにいくのは初めてだ。
ピンマイクが切れている事を祈りつつ、「な〜に?」
帰ってきた答えが、さっき喋った台詞。質問する訳にも行かずすごすごと戻る。

終わってから聞くと、「そこからやらないと、4曲演奏できなくなるので」と。

台詞を聞きにいった事で、もう怖いものはなくなったと、この時は思った。

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終了後は「なまらや」へ。
実行委員でもある、松月堂の奥村さんが
バースデイケーキをつくってきてくれた。
仕事が終わってから作ってくれたらしい。
わたし57回目の誕生日。
蜂谷さんからは、対のグラスをいただく。
他人の誕生日を稽古中や本番中に祝う事はあるが、自分のは多分初めて。
皆さんに祝福されて、ローソクの火を消しました。
こんな誕生日もあるんだな。
歳とっちゃったな〜。
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by miminashibiwa | 2010-08-17 16:38 | おたる遊幻夜会

「直面(ひためん)」その20。


今回の公演での[飛び道具]

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何人かから、ブログにある飛び道具って何?との質問。飛ばない飛び道具と書いていたのだが。
7月2日に西新宿のヘア コンタクトのプロピアで打ち合わせ。
「直面」の主役が今年米寿(88歳)を迎える男なので、長い付け眉毛を付けるける事を思いついた。
第一通信社の友人に問い合わせたところ、プロピアさんにテクニカル協賛をしていただける事になり会社に赴く。
試しに付けてみる。こんな長いものまで付くのです。真っ直ぐ引っ張っても取れないくらいの粘着力。
開発部次長の伊藤氏と営業一課課長代理米山さんの指導のもと、カールの仕方、白髪の割合などの要望を出し試作品を作ってもらう事になる。
ちなみにヒゲは本物です。
  プロピアさん、ありがとうございます。


7月16日、演出の十島さんとプロピアに試作品を見せてもらいに行く。
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  すごいね〜。いかが?笑っちゃう?

スキバサミで調節してもらい、短くした方の形で左右12セット作ってもらう事に。
試作品もそのままいただく。稽古場で使おう。


8月2日
プロピアに眉毛12セットを取りに行く。昆虫標本のよう。
明日から小樽、いよいよ付ける時が来た。


公演中の写真は、しばらくお待ち下さい。


8月8日
       眉毛の入った箱。
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右用と左用があります。使い切り。
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東京より暑かったとか言われる今年の小樽。高温多湿の野外能舞台で、2時間の公演に何の問題もなくくっ付いていました。付け眉毛は仮面のようなもので、本物だと思った方が多かったのには、我が意を得たりとほくそ笑みました。お土産に差し上げた方も数人います。腕に付けたり眉の上に付けたりして帰りました。

しかし、飛び道具にはなっていなかったという事ですね。残念。
ここに勝負をかけたのだが(笑)!


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            楽屋にて、マコちゃん写す。
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by miminashibiwa | 2010-08-15 00:59 | おたる遊幻夜会