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琵琶法師の毛づくろい
by miminashibiwa

しゅうさん

2016年1月28日(木)
両国のシアターXに、「TOC TOC」という芝居を観に行く。
なんと受付で、石澤秀二先生にばったり。桐朋学園演劇科の先生であり、青年座の演出家であった。昭和五年(1930)年生れというから、今年86歳になる。お元気そうで、ひと安心。
元青年座・桐朋学園演劇科出身の土師孝也さんが出演しているので、今日会うことが出来た。帰りは、駅のそばの喫茶店で話す。今まで、先生とふたりで長話をした事はなかったような気がする。
演劇科三年目の専攻科の試演会は、石澤秀二演出・別役実作「あーぶくたった、にいたった」だった。文学座アトリエで初演されたばかりの芝居だった。今日先生に確かめたら、舞台装置の電信柱を文学座から借りたのに間違いなかった。
同期のオショウの言葉だったか、「役は取るものだ。みんな演出家に電話をかけて取るんだ」というのに乗せられて、初めて先生に電話してやりたい役に立候補した。今日その話しをしたら、先生は覚えていなかったが、めでたく役がついた。その後そんな事をした覚えはない。多分?
その稽古で不思議なことが起こった。先生が来て立ち稽古になった時、目の前全面にダリの画が現われたのである。あのぐにゃりとしたような画ではなかった。その画を見ながら台詞を言い続けた。そのシーンは幕開きの、金屏風の前で花嫁花婿が話しているというところである。少し前に、西武美術館でダリ展を見ていたが、その画は記憶がなく、ふたたび見に行ってみたが目を引くような画ではなかった。もう一度起こらないかと、その画をイメージしながらやってみたが、何度かあったかなかったか。見ている人も、先生も当然そんな事は分らないのだが、面白い現象だった。土色の地面が描かれているような画だったと記憶している。

先生の奥さまは、劇作家の石澤富子さんである。「琵琶伝」という戯曲集が出ていて、以前から持っていた。「琵琶伝」は琵琶法師が出て来るので、1期生のマサフミさんから勧められた事もあるが、出演者も多く、劇団や演劇グループに所属していないわたしには無理な話と思っていた。何度か読みかけたことはあるが、読了したのか疑問であった。
今日は先生と、その「琵琶伝」の話しになった。本には未上演となっているが、観世寿夫さんの冥の会で、話しを短縮し出演者も少なくしてやった事があるという。
話しているうち先生は、戯曲を短くして琵琶の語り物にして、ひとりでやったらどうかと言われた。予想もしていなかったので驚くと同時に、なんと嬉しい(恐ろしい)事かと思った。手伝ってくれるとも言ってくれた。
帰って「琵琶伝」を読む。これは大変!やはり未読だったようだ。
唸っている。一度読んだだけでは、まったく手が出ない。調べる事も多そうだ。言葉はすばらしい。いい台詞がいっぱいある。凄い人だったのだな、石澤富子さんは。
今日芝居を観に行って良かったと、つくづく思った。土師さんに感謝。
しかし、またまた嬉しい悲鳴をあげることになった。
う〜ん。まず、寝よう。
by miminashibiwa | 2016-01-29 02:22 | 耳ざわり通信