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琵琶法師の毛づくろい
by miminashibiwa

あでん

2016年1月11日(齧)
新聞に、「ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい」というポール・ニザンの言葉が載っていた。小説「アデン・アラビア」の一節。今日は、成人式。

どうして買ったのかは覚えていないが、「アデン・アラビア」もふくめポール・ニザンの本は三四冊持っていた。若い頃、ポール・ニザンが流行っていたのだろう。引っ越しのとき、みんな売り払ってしまい、今はない。ほとんど中身の記憶がないから、ちゃんと読んでいないのだろう。あの頃の晶文社の本は魅力的だった。背表紙も輝いていた。

私の二十歳は、荻窪に住み阿佐ヶ谷のピーターパンでクロワッサンと小岩井牛乳を買い、フレンチローストでカフェオレを作り楽しんでいた。ジャムやマーマレードが輝いていた。今や年に一度食べるかどうか。アルバイト先の喫茶店は、ストレートの珈琲をサイホンで出していたし、阿佐ヶ谷にはポエムという100種類も珈琲メニューがある店があった。珈琲専門店があちこちに出来ていた頃だ。チューリップの「心の旅」が流行り、バイト先の裏のゲームセンターからは、一日中大音量で流れていた。当然、不安と期待の入り交じった日々。でも知らない事ばかりで、街も人も物も面白くてしょうがなかった気がする。紀伊國屋書店の本の数にも驚いていた、喜んでいた。ビルの中にあった中華料理店の食べ放題のランチでは、いつも食べ過ぎて腹を壊していた。バイトの帰りは阿佐ヶ谷で降り、ポエムで珈琲を飲んで帰る日々だった。たまに毘沙門でジャズを聴き、下の店でスパゲティを食べた。あの真っ赤な口紅のお姉さん懐かしい。ずっとあとで、オレ付き合っていたと言ったあの人も亡くなってしまったな。永島慎二の漫画で読んでいた阿佐ヶ谷に憧れていた。キッチンチャンピオンも行った。吐夢にも行った。なんてことを思い出した、成人式の夜。ちなみに私には成人式の案内が来ず、行かずじまい。喫茶店でアルバイトをしていた。カウンターで、珈琲を淹れておりました。同じような年の大学生や芝居を志す人たちといっしょに。チーフは苫小牧出身の佐藤さん。元気かな〜?お世話になりました。
by miminashibiwa | 2016-01-12 01:33 | 耳ざわり通信